国からの新型コロナウイルスワクチン供給の見通しが立たないとして、兵庫県丹波市は6月29日、新規の64歳以下のワクチン接種の予約受け付けを中止した。個別接種、集団接種とも新規の受け付けは当面見合わす。同市は28日に、16歳―64歳以下の3・3万人に接種券を発送したばかり。「ワクチンはある。64歳以下にも早く接種をと政府は言っていたじゃないか」と、住民と最前線で向き合う自治体職員は政府に振り回されている。政府は新規の職域接種の受付を停止するなど、国レベルで細る新型コロナウイルスのワクチン供給が、地方自治体の接種にも影を落としている。
「見通しが立たないまま、予約を受け付けては混乱を招く。いったん中止せざるを得ないと判断した。ワクチンが届く見通しが立てば、受け付けを再開する」と、丹波市健康課は対応に苦慮している。
今週同市に、1万1700回分のワクチンが届く。そこから先の第9クール(7月5日の週と12日の週)以降の配分が見通せない。「第9クールは何割か減ると言われていて、その次の第10クール(7月19日の週と26日の週)は、全く見通しが立たない」(市健康課)。
国は、65歳以上高齢者の接種率100%を見込み、丹波市には約4万1000回を配分。市の65歳以上高齢者の予約率は約90%。現時点で市が確実に64歳以下の接種に供給できるのは、この差の3000-4000回分ほど。
市は、これを全てエッセンシャルワーカー(高齢者福祉、障がい者福祉、子育て支援の従事者の約3100人)に割り当てる。第9クールの入荷量も定かでないが、エッセンシャルワーカーに回す。
同市医師会が7月から個別接種を本格実施することもあり、接種券が手元に届いた市民が6月29日から個別接種の予約を取ろうと動き始めているが、市内では当面、予約が取れず、大規模接種や職域接種を利用する以外にない。
同市は60―64歳は7月12日から集団接種の予約受け付けを始め、段階的に受け付け対象年齢を引き下げていく計画だったが、これも凍結した。
総務省と県に見通しをたずねた林時彦市長によると、両者の返事は「分からないだった」という。「65歳以上を早く済ませて、64歳以下も早く接種をとさんざん急かされ、必死で体制を構築してきた。ワクチンが供給できないなんて、はしご外しでいい加減過ぎる。供給が減るなら減るで、数量を示すべきだ。でなければ、予定が立てられない」と、ワクチンが届かないことへの対応を市町村に丸投げするかのような国の態度に憤っている。